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本を読んで踊ろう

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【地球と書いて<ほし>って読むな 上坂あゆ美著】家族と日常と「ほんとうのこと」

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こんな方におすすめです!

  • 家族との関係を考え直したい方
  • 過去の出来事を振り返り見つめ直したい方
  • 日常に新しい視点を持ちたい方
  • 短歌やエッセイに興味のある方

どんな人にも響く部分、心が揺さぶられる瞬間があると思います。

読むきっかけ

本屋を歩いていたらタイトルが目に留まる。
「地球と書いて〈ほし〉って読むな」という命令口調のインパクトに、思わず足を止めました。
なぜ「〈ほし〉と読んではいけない」のか?
真っ赤な表紙とタイトルの組み合わせも刺激的で、「読むしかない」と思わせる不思議な魅力がありました。
これは単なるエッセイではなく、著者が何か重要なメッセージを伝えようとしているのではないかと感じました。

交互に織りなすエッセイと短歌が与える本書の魅力

上坂あゆ美さんは1991年生まれの歌人、エッセイストです。出版された本に「無害老人計画」「歌集副読本」があります。
ユーモアと達観した洞察力で日常の「ほんとうのこと」を見つけ出す作風が特徴です。
この「地球と書いて<ほし>って読むな」は嵐のように吹き荒れる毎日を過ごす少女が「ほんとうのこと」を追い求め、大人になった今、独特な感性で今までの人生を俯瞰して家族や日常のことを描いています。
痛烈に、そしてユーモアを交えつつ嘘を感じさせない語り口こそが、彼女が幼い頃から追い求めていた「ほんとうのこと」なのかもしれません。
本書には短歌が収録されています。エッセイと短歌がリズムよく交互に展開されているのが特徴です。
短歌がエピソードの背景を鮮やかに浮かび上がらせ、心にずっしりとした読後感を与えます。

嘘のないリアルな語り口

著者の描き方には嘘がないのが魅力です。
例えば、自分の過去の出来事や感じることを伝える際面白く伝えるために話を盛る人に対し、彼女の語り口は常にリアルで時に痛々しいほど伝わってきます。
著者の生まれたとき〜少女時代〜現在の人生は「普通」とは程遠く、
『ハードモード』な人生だと私は思います。
そんな人生を生きてきた著者の文章は自分の人生を冷静な洞察力で上から覗き込むような姿勢で書かれています。
その彼女の生きた人生と自分の人生が全く違うものでも、
きっと共感せざるを得ないエピソードがあると思います。

この本は本文の終わりにエッセイの内容を表す短歌が収録されています。
本文→短歌→本文→短歌…のように書かれていて本自体がリズム良く読めるものとなっています。
少ない文字数なのにも関わらず日常の背景が鮮烈に浮かび上がる著者の短歌。
エッセイ部分と合わせて読むことによって彼女の考え、心の核となる部分に一歩近づけるような感覚になります。

人それぞれの「家族の向き合い方」がある

私が特に印象に残ったエピソードがあります。
それは著者に彼女の母親から「子供を産んだ方が良い」と言われるエピソード。
「ママの幸せが子どもの幸せとは限らない」
「親の言葉は一生の呪いになり得るから言葉に気をつけてほしい」と
母に伝えるが、心から心配している母に理屈で論破してどうするんだろうと我に帰ります。
すると母は、「親の言葉は呪いになるよね」と謝ります。

私はこのエピソードを読んで自分と自分の母親を重ねました。
きっと私の母にも”自分の親からの呪い”があり私自身にも同じようなものがあるのだろうと思います。
呪いが憎しみに変わることさえあったかもしれません。
思いを正直にぶつけるという行為は自分も相手も同じくらい傷つくけど、お互いの呪いを解きほぐし分かり合える瞬間があるのかと思うと、(生きている間に)伝えることを諦めたくないなと思います。

私たちの中にある「ほんとうのこと」

彼女の人生と私の人生は全く違うものでもどこか強烈に惹きつけられ共感させられるのはなぜでしょうか?
それはきっと読む人が無意識に持っていた感情が著者にとっては「ほんとうのこと」であり、その「ほんとうのこと」を嘘偽りなく描いているからだと考えます。
我々が家族や日常に対して持つ無意識の感情が言葉として表現され、
そして背景豊かに描かれている短歌と一緒に味わうことによってどうしても他人事とは思えなくなります。
そして彼女の洞察力あふれた視点には自分すら気づかなかった心の中の「ほんとうのこと」にハッと気づくものがあります。

著者の短歌やエッセイが教えてくれるのは、心の奥底にある感情と向き合う勇気。
「ほんとうのこと」に向き合うことは痛みが生じるときもあるかもしれません。
ですが、それは自分自身の人生を生きるために必要な一歩なのだと感じました。

自分も過去を振り返る

この本は私たちの日常に気づきと新しい視点を与えてくれる一冊です。
そしてこの本を読み終えたとき思わず私も子供時代の出来事を思い出しノートに書き留めたくなりました。
もしかしたら過去を振り返ることによって未来の自分の助けになるかもしれません。
嵐が過ぎ去った感覚とじんわり心が温かくなる感覚が読み終わった後に同時に訪れる私にとって特別な一冊になりました。

この心地よい余韻を、ぜひあなたも味わってみてください。

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